
「あの明るい星、なんていう名前だろう?」
夜空を見上げて、そう思ったことはありませんか。そんなときに iPhone をかざすだけで名前がわかるアプリ「StarLens(スターレンズ)」を作りました。無料で、広告もありません。
星座アプリが「ずれる」のが悔しかった
星を見ていると、「あの星、なんて名前?」と聞かれることがよくあります。そんなとき星座アプリをすすめるのですが、表示された名前が、指さした星からずれていることがありました。多くの星座アプリは、iPhone のコンパスとジャイロで「どちらを向いているか」を推定しています。コンパスは周りの鉄やビルの影響を受けやすく、名前が星から離れて表示されることがあります。
はじめて星を見る人ほど、自宅のベランダや近所の公園から空を見上げます。そういう場所でこそ、名前がぴったり重なってほしい。そう思って StarLens を作りました。
写っている「本物の星」に合わせる
StarLens の中心にあるのは、天体写真の世界で「プレートソルビング」と呼ばれる方法です。ひとことで言うと、写真に写った星の並びから、空のどこを写したのかを割り出す技術です。
夜空の星の並びは、場所ごとに形が決まっています。StarLens はカメラの映像から星を見つけ出し、明るい星どうしがつくる三角形の形や大きさを、アプリに入っている星のカタログと照らし合わせます。形がぴったり一致する場所が見つかれば、「いま iPhone はこの方向を向いている」とわかります。これを 1 秒間に何回も、iPhone の中だけで繰り返しています。
コンパスは周りの鉄やビルに引っぱられて方角が狂いますが、星の並びは狂いません。だから建物の多い街なかやベランダでも、名前が星から離れないのです。手を動かして一瞬星が見えなくなっても、ジャイロ(iPhone の傾きセンサー)でつなぎ、星が見えたらすぐに合わせ直します。
表示する名前と位置も、確かめてから載せています
- 星:位置はヨーロッパの位置天文衛星「ヒッパルコス」の観測データをもとにした約 5,000 個の星のカタログ。名前は国際天文学連合(IAU)が認めた固有名に限り、日本語の星や星座の名前は国立天文台の表記に合わせています。
- 惑星と月:アプリの中で計算し、NASA ジェット推進研究所(JPL)の精密な位置と比べて、ずれが角度で 5 分(月の見かけの直径の 6 分の 1)以内であることを確かめています。月の出入りの時刻も国立天文台の暦と分単位で一致します。
- 実際の空で:街明かりの多い空と、比較的暗い空の両方で記録をとり、名前の位置が写った星から 0.1 度ほど(満月の直径の 5 分の 1)以内に収まることを確認しました(くわしくは次の節で)。
星のカタログも計算もすべてアプリの中に入っているので、通信は一切不要です。電波の届かない山の上やキャンプ場でも、そのまま使えます。設定の「詳細設定(上級者向け)」では、視野の中心の座標や露出、照合できた星の数も表示できます。
光害の空でも、暗い空でも試しました
机の上のシミュレーションだけでは、本物の夜空でうまく動くかはわかりません。そこで、晴れた夜はとにかく空に向けて試しました。
まずは自宅のベランダ。街明かりで星がまばらにしか見えない、光害の強い空です。ビルの壁や窓の明かり、薄い雲、月明かり。いろいろな光があふれる空の中でも、アプリが「これは星」「これは星ではない」を見分けられるように、一晩ずつ記録をとっては直すことを繰り返しました。
出張先でも、仕事を終えてから寝る前の時間に、比較的暗い空の下で確かめました。iPhone を空にかざしてぐるぐる回している人がいたら、それはたぶん私です。

アプリは使っているあいだの様子を記録できるようにしてあり、そのデータを見ながら、名前が本物の星にぴったり重なるまで調整を重ねました。空に向けて数秒で「星を認識しました」に変わり、名前が星に重なる様子を収録した動画です。
できること
- 星・星座・惑星・月・メシエ天体の名前を、カメラの映像に重ねて表示
- 名前をタップすると、色や距離、昇る・沈む時刻などをやさしく解説
- 「今夜の空」から月や惑星を選ぶと、矢印でその方向へ案内
- 地平線と東西南北の表示
- 名前入りの星空写真を撮って共有
- 目にやさしい赤いナイトモード
- 屋内や昼間でも試せるデモモード
- 15 言語に対応(日本語の星や星座の名前は国立天文台の表記に合わせています)


今夜の空で試してみるなら
この秋の宵は、南東の空で土星が明るく輝いています。西の空高くには夏の大三角(ベガ・アルタイル・デネブ)がまだ残っていて、北東の空ではカシオペヤ座の近くにアンドロメダ銀河(M31)が見つかります。「今夜の空」で土星を選んで、矢印についていってみてください。
天文の民のみなさんへのお願い
StarLens は、はじめて星を見る人のためのアプリです。でも、このブログを読んでくださっている、望遠鏡や双眼鏡と夜を過ごす「天文の民」のみなさんにこそ、育てていただきたいと思っています。
- 身近な人にすすめてください
ご家族やご友人、観望会に来たはじめての方に。「名前が本物の星にぴったり重なるから、これなら迷わないよ」と渡していただけたらうれしいです。 - 厳しい目で確かめてください
名前の位置のずれ、星の取り違え、名前や表記の誤りなど、気づいたことがあれば教えてください。「その星、名前ずれてない?」という鋭いツッコミを、心よりお待ちしています。 - ほしい機能を教えてください
「こんな天体も出してほしい」「観望会でこう使いたい」といったご要望は、今後の改善の参考にさせていただきます。
ちなみに開発中、ボートルスケールの神さまはあまり微笑んでくれませんでした。満天の星の下で夜を過ごせる天文の民のみなさん、暗い空で StarLens がどう動いたか、ぜひ教えてください。
ご連絡は starlens@realstarry.com へ。使ってみた感想を App Store のレビューに書いていただけるのも、大きな励みになります。
無料・広告なし・データ収集なし
StarLens は無料で、広告もアカウント登録もありません。カメラの映像や位置情報は iPhone の中だけで処理し、外部には送りません。
詳しい使い方やよくある質問は、StarLens の紹介ページにまとめています。これからも改善を続けていきます。



コメント