星雲・星団・銀河を自分の手で導入したい!
初めて天体望遠鏡を手に入れて月や惑星を鑑賞していく内に、星雲・星団・銀河といった天体も見てみたくなりますね。こういった天体は、惑星などと違って肉眼で見つけることが困難なので、星々の配置を目印として天体を探していくことになります(天体導入)。
自動導入架台を使ってしまうのも手ですが、自分の手で天体望遠鏡を動かして見る天体は特別な体験となることでしょう!
そこで、星々の配置が記載されている「星図」を見ながら実際に見えている位置を確認していくのですが、ファインダーから見える星々と星図に差がある事から迷子になってしまう事があります。
今回は初心者が快適に目当ての天体を見るための方法をご紹介致します。
もしも、当記事の方法以外におすすめの方法をご存知でしたら、コメント欄でお知らせ頂けると嬉しいです。
天体に天体望遠鏡向ける = 導入
目当ての天体に望遠鏡を向けることを、天体を導入すると言います。ただ向けるだけではなく、接眼レンズもしくはカメラから天体が見えるように向きを微調整するところまでを含みます。
本記事では Sky-Watcher AZ-GTi 等の自動導入架台を使用せずに、手動で天体導入することを目指します。
AZ-GTi については以下の記事をご参照ください。
手動導入が出来るという事
手動で導入ができるようになれば、ドブソニアン望遠鏡のような大口径の鏡筒であっても臆することなく使いこなせる様になります。
私は自動導入機構がないドブソニアン望遠鏡を使っていますが、手動導入ができる様になってからは高い稼働率で楽しめています。
Sky-Watcher DOB6 クラシックは3万円台で入手できる口径15cm鏡筒です。お安い上に末長く楽しめる良い鏡筒です。機会があれば、別途記事にしたいと思います。
天体導入の流れ
大まかな流れは以下の様になります。
- 星図アプリから目当ての天体を選ぶ
- ファインダーの視野に星図アプリの表示を合わせる
- ファインダーと星図アプリを見比べながら鏡筒を動かす
- 鏡筒の接眼レンズの視野に星図アプリの表示を合わせる
- 接眼レンズと星図アプリを見比べながら鏡筒を少しずつ動かす
- 導入成功!
今回の方法は星図アプリを使用して正立ファインダーを使う手動導入です。
正立ファインダー
天体望遠鏡に付属のファインダーは多くの場合、倒立ファインダーです。これは見え方が上下左右反転した像になります。
天体導入の際には、星図とファインダーを何度も確認することになります。倒立ファインダーの様に上下左右が反転していると、頭の中でそれを補正する必要があります。その際に、初心者の場合は上手く反転した星の配置を認識しづらい為に、途端に今向けている場所が何処なのかが分からなくなってしまいがちです。
そこで、上下左右が反転していない「正立ファインダー」を使用することでファインダーの見え方を星図と一致させる事が出来ます。
私は SVBONY のSV208 正立ファインダー を使っています。
付属のファインダーと比べて口径が 5cm と大きめなので集光力が高い事が気に入っています。接眼部が他の正立ファインダーと違って90度屈曲していないので、見ている方向と鏡筒を操作する向きが一致するので直感的に使えるところも良いと思っています。
このファインダーのおかげで導入が出来る様になったと言っても良いほど、いい買い物でした。別途記事を書こうと思っています。気になる方がいらっしゃいましたら、コメント欄に書いていただければ嬉しいです。
星図アプリ
書籍の星図も良いのですが、今回はスマートフォンの星図アプリを活用します。なぜならば、ファインダーの視野をアプリに設定する事で星図の見た目がファインダーの見た目と一致させることが出来るからです。
スマホアプリ「Stellarium Mobile」は今夜見たい天体の下調べにも有用ですが、今回の用途は導入支援です。
ファインダーの視野を設定することで、下の画面の様にファインダーで見た際の星の見え方が明確にわかる様になります。
導入したい天体を選択する
それでは、導入を行なっていきます。手始めに天体を指定しましょう。
Stellariumの画面を移動したり拡大して、気に入った天体をタップして選択することができます。天体名がわかっていれば、検索窓に天体名を打ち込むことでも選択できます。
ファインダーの視野を設定する
Stellariumは複数の視野設定を持つことができます。画面下部の視野選択アイコンをタップします。
すると、以下のように視野を選択する画面が表示されます。私は既に複数の視野を保存しているのでこのような表示になっています。
今回は SV208正立ファインダー の視野を追加してみましょう。画面下部の追加ボタンをタップします。
視野の種類を選択する画面が表示されるので、今回は「円」をタップします。
視野を設定する画面が表示されます。
SV208正立ファインダーの視野は、メーカーの商品説明に7.3°とありますので、Stellariumの「FOV」に7.3と入力します。
また、後々分かりやすい様に名前も付けておきます。
入力が終わったら、左矢印ボタンをタップして視野選択画面に戻ります。
追加した視野が一覧に表示されていることが確認できます。追加した視野「SVBONY SV280」をタップすると、画面に視野が現れます。
これで、ファインダーで見る星の位置とが画面と一致するようになりました。
天体望遠鏡側の視野を設定
ファインダーと同じ手順で、天体望遠鏡と接眼レンズのセットを登録しておきます。
天体望遠鏡の仕様を設定します。Sky-Watcher DOB6 クラシックはメーカーの商品紹介欄から焦点距離1,200mmで、口径150mmと説明されていますので、画面に入力します。
天体望遠鏡の次は接眼レンズを設定します。「接眼レンズ/カメラ」の追加ボタンをタップします。
接眼部に接続する物を選択する画面が表示されるので、接眼レンズを選びます。
接眼レンズの設定が表示されるので、仕様を入力します。今回はSVBONYのズームアイピース SV135 の21mm時の仕様を入力しました。
ズームアイピースは短い焦点距離から長い焦点距離を1つの接眼レンズで対応できるので、視野をすばやく切り替えることが出来て便利です。
入力後は左矢印ボタンで、望遠鏡設定画面に戻ります。
望遠鏡設定画面にて接眼レンズを選択すると、星図に視野が表示されました。
Stellarium をナイトモード表示にする
このまま使用しても良いのですが、目が暗さに馴染んでいる際に明るい画面を見てしまうと、せっかく開いていた瞳孔が閉じてしまって暗い物が見えにくくなってしまいます。Stellariumをナイトモードに設定して、目の負担を軽減しましょう。
画面下部のアイコンをタップします。
画面表示に関する設定画面が現れるので、「ナイトモード」をタップして切り替えます。
すると、画面の配色が赤色に切り替わります。
近くの明るい星を見つける
目あての天体の近くに明るい星が無いかを探してみましょう。今回は、M13 ヘルクレス球状星団を目標に導入してみます。
Stellariumを見てみると、M13はヘルクレス座の中心部から右側にあることが分かりました。
ヘルクレス座の中心部は特徴的な星の配置があることがわかったので、これを目印としてファインダーを覗きながら鏡筒を向けます。
Stellariumの見え方とファインダーの見え方が一致するようにします。
ファインダーを星図に合わせながら移動する
Stellariumの画面を操作して、視野を右側にずらして Zeta Herculis を視野の左側になる様に移動します。
すると、ファインダーの視野にM13が入ることがわかります。
Stellariumの見え方とファインダーの見え方が一致するように鏡筒を動かしてください。
一致させることが出来たら、Stellariumを操作してM13を中心に表示させると、視野内に目印に出来そうな星々があることがわかります。
これらの星の位置と一致する様に、ファインダーを覗きながら鏡筒を移動させてください。
これで鏡筒はM13付近を向いている状態になりました。
最後の微調整 接眼レンズで移動する
Stellariumの視野設定を望遠鏡+接眼レンズに変更します。
視野がかなり狭くなりますが、以降の手順はファインダーのそれと同じです。目印となる星の配置をStellariumで確認して、鏡筒を移動させることで目あての天体まで移動します。
天体の付近で望遠鏡を少し動かすと、僅かな天体の光を気付きやすくなります。
これで導入が完了できたはずです!おめでとうございます!
最後に
手動導入は自家用車を運転する感覚に似ていると思います。目的地までの道を確かめながら移動していくので、道中のいろいろな物への興味や理解が深まっていきます。反面、道に迷うことがあり得ます。
自動導入はタクシーに乗せてもらう感覚でしょうか。自分で運転しない分、余裕を持って景色を楽しめますし、迷うことなく目的地に到着できるでしょう。
今まで自動導入に頼りきりだったのであれば、是非手動導入にチャレンジしてみてください。いつもの天体が違って見えること間違い無しです!
それでは、皆さま良い天文ライフを!
コメント
私の望遠鏡は安物なのでレッドドットファインダーです。なので、まず接眼レンズを一番低倍率にして目的の天体付近に合わせ徐々に倍率を上げて目的天体を導入しています。
コメントありがとうございます。
実はこの記事を書いた後、光学式ファインダーの上にドットファインダーを乗せました!
松原さんのおっしゃる通り、倍率は徐々に落としていく事で、より高速な導入ができるようになりました。